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てをつなぐ

今日 素敵な老夫婦を見かけた。

子どもの頃から 年老いた夫婦が手をつなぎ歩く姿に憧れていた。

それは映画や物語の中ではあったけれど 長い紡いできただろう夫婦のつながりを感じ きっと彼らは ずっと変わらずこうであっただろうと思っていた。

夫とは仕事場で出会い、先輩後輩はあったものの 同志のような同じ方に向かう仲間のような気持ちだった。それはいっしょになっても変わることなく 「手をつなぐ」なんてことはまるで別の世界の話だった。

数週間の休みの後 だんだん家のまわりを歩けるようになったある日 気分転換にと 駅前まで歩いて出てみようと誘ってみた。

体力が落ちていることも気になっていたし 天気もいいこと、歩いてみることにした。

家の周りは畑もありのんびりした空気。平日の昼間に散歩なんてという思いもあったようだが いまどき世の中全てのお父さんが平日仕事なわけもなく 寝巻きででも歩いているわけでなければ 何の問題のないとおもってくれたようではある。

しかし小さいとはいえ駅の近くは 人も車も増えてくる それよりなにか『ちがう』ものの力に耐え切れなくなった。「やっぱり帰ろうっか」と戻ろうとした私の手が突然ぐっとつかまれた。

「ちょっと待って…」夫はすでに動けないところまできていた。

しばらくして少し落ち着いてきたようす 手はつながれたままゆっくり それでもできるだけその場を離れるように帰路についた。

その後も出かけるごと ある種の店であったり ときには普通の道でさえそんなことが続いた。

(水のこともあり なにもかも敏感になってしまう時期があるのかもしれない。その道も川を埋めた遊歩道で たぶん気が滞っている場所 そのことを彼に伝え 道を変えると別人のようであった。私のオカルト雑学も無駄ではなかったようではあるのだが うそかほんとかこのあたり川も近いこと水路あとがたくさんあり なんと歩きにくいことか。でも彼の様子に”気”というものはあるのだと思った。)

そんなことが何回か続き 今まで子どもたちとつなぐためだった手が二人をつなぐようになった。

体調が戻るにつれ そんなこともなくなってきたが 今も人ごみの中互いの気配を見失わないように手をつなぐ。

そして 散歩のときもそっと手をつないでみる。

あの老夫婦もこんな時間を過ごして手をつないでいるかもしれない。

今日はそんなことを思っていた。

   

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